長生きするほど得になる?トンチン年金とは
トンチン年金と呼ばれる新しい年金が2016年に商品化され、注目されているようです。長生きするほど得をするというのが、この年金の特徴です。
トンチン年金とは

トンチンとは聞き慣れない言葉ですが、17世紀にフランスの財政難を救うことを目的に、イタリア人のロレンツォ・トンティという銀行家が考案した年金であるため、トンチン年金と呼ばれているそうです。
フランスの他にオランダや欧米各国でも以前から販売されていて、とても人気があるようです。
保険会社や契約者の性別により多少の違いはありますが、トンチン年金の商品内容の例を挙げておきます。
- 契約できる年齢:50歳~85歳
- 年金の受取りが始まる年齢:60~90歳
- 損益分岐年齢:男性は90歳、女性は95歳くらい。
- 年金の種類:保証期間付終身年金保険または、確定年金
- 年金額:60万円程度
- 月払保険料と払込み期間:月額5万円程度を20年間払込み。
トンチン年金の大きな特徴は、亡くなるまで年金が受け取れる代わりに、損益分岐年齢までに死亡したら損をしてしまうということです。
日本でのトンチン年金の背景は、超高齢化と超低金利?
日本では長寿の人が増えて人生100歳時代とも言われていますが、若い世代の人口の減少で公的年金の受給額は減少する可能性があると考えられています。
そのため、長生きすることは経済的にはリスクがあると考えざるを得ないようです。

そのようなリスクを避けるために、生きている限り年金が受け取れるトンチン年金が注目されるようになったようですが、日本ではトンチン年金は最近まで商品化されていませんでした。その理由は、他国との道徳観の違いではないかと考えられています。
つまり、死者が払ったお金で生存者が恩恵を受けるのは、道徳に反するのではないかという考え方です。まるで究極のサバイバルゲームのようであるという見方をする人もいるようです。
しかし、平均寿命がどんどん延びて超高齢化社会になっていることが、このような考え方を打ち破ることになったと言えるようです。
また、長く続く超低金利も、トンチン年金の商品化につながったようです。
金利が高かった頃には、契約者から払い込まれたお金を保険会社は高金利で運用できましたが、今では低い利率でしか運用できません。そのような状態では利回りの高い保険商品の販売は難しく、顧客離れも進んでしまいます。
そこで、年金支給前に亡くなった人への返戻金を少なくして、残りは生存する人たちに振り分けるしくみのトンチン年金の販売に踏み切ったようです。
トンチン年金の契約者の中で、長生きした人は年金を長期に受け取ることが可能となり、ある商品の場合、100歳まで生きた男性は保険料総額の1.63倍、女性は1.3倍の年金が受け取れることになるそうです。
元気に長生きできた人が多額の年金を手にする
トンチン年金では、年金の受取り開始前に亡くなっても、払い込んだ保険料の7割程度しか戻ってこないそうです。一方で、たとえ100歳でも110歳でも生きている限り年金が受け取れます。
早く亡くなった人が払い込んだお金は、長生きした人に回っていくという仕組みです。
年金額が払い込んだ総額よりも多くなる「損益分岐年齢」とも言うべき年齢は、保険会社にもよりますが、男性では90歳前後、女性では95歳前後となるようです。

2016年の日本では、90歳まで生きる男性は5人に1人、95歳まで生きる女性は5人に1人と言われていますから、平均すると5人のうち4人は、残念ながら元本割れしてしまうことになります。
一般的な生命保険では、たまたま不幸に見舞われた人(死亡)の遺族が多額の保険金を受け取るしくみです。損害保険である自動車保険でも、たまたま事故を起こした人に保険金が支払われ、無事故の人は完全に掛け捨てとなってしまいます。
トンチン年金ではこれらとは逆に、元気に長生きできた人が多額の年金を手にすることができるわけです。
年金と比べてどんな特徴があるか

通常、個人年金保険の受取期間は、10年間、20年間などと決められていることが一般的ですが、トンチン年金では亡くなるまで受け取ることができる終身年金がメインになるとのことです(受取期間を確定したタイプの商品も一部あります)。
長生きできずに元本割れしてしまう可能性があるため、経済的に余裕があり、預貯金だけでは老後が不安な人におすすめとも言えるようです。月々の保険料の負担も決して少なくないようです。
通常の個人年金保険の場合、保険料を払い込んでいる途中で契約者が亡くなったら、払い込んだお金は遺族に全て戻ってくるそうですが、トンチン年金では全て戻ることはなく、7割程度だそうです。
トンチン年金のメリット・デメリットは?
トンチン年金のメリット
若い時から老後対策ができていない人でも契約が可能で、50歳から最高87歳までが契約の対象です。これから自力で資産が増やせる可能性のある若い世代は、契約の対象外です。
健康診査も告知も不要で、所得税の控除もあり、何より老後の安心感が持てると言えます。

現役時代は月々の給料で生活していた人でも、老後は公的年金に加え、取り崩した預貯金に頼ることが一般的ではないでしょうか。
自分では寿命がわからないわけですから、あと何年頑張ればいいのか予測がつかず、先行きに不安を覚えるのは誰もが同じかもしれません。
あまりにも長生きしたら、介護費用等で子供に負担を掛ける可能性もあるでしょう。そのような状況でも、亡くなるまで受給できる年金が公的年金以外にもあれば、より安心して暮らせるかもしれません。
商品によっては、終身年金で契約してもあとで確定年金に変更することができるそうですから、健康に不安が出てきた場合の問題も解決できそうです。しかし、確定年金にすると長生きのメリットはなくなることを理解しておく必要があります。
トンチン年金のデメリット
払い込んだ保険料よりも多くの年金を受け取るためには、かなり長生きする必要があります。保険料の払込みが完了しても、支給開始年齢までに死亡するとかなりの損失になります。
しかし、元を取るために長生きしなくてはならないというのも、生きる目的として如何なものかと感じる人もいるかもしれません。
実際、トンチン年金の契約件数は保険会社の予想を上回る好調な伸びを見せているそうです。ある保険会社では、発売から1年間で4万件もの契約があったそうです。
契約者の4割は50歳代で、男性よりも女性が多いそうです。
元本割れのリスクよりも、老後の安心感を得ることを優先させたいという人が多いことの表れなのかもしれませんが、契約にあたっては、充分に検討することが必要であると言えそうです。