退職後の人生

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退職金は給与の後払い?退職金がもらえる会社・もらえない会社

会社が定めている場合には、退職金は社員に対する責務

勤めていた会社を定年や自己都合、死亡、解雇等により退職する際、退職金が支給される制度があります。

会社の就業規則で退職金の支給を定めている場合や、就業規則には定めていなくても退職金を支払うことが慣例になっている場合は、支払うことは会社の義務となるそうです。つまり、会社が社員に対して負う債務ということです。

会社には健康保険や厚生年金、雇用保険の加入義務はあっても、退職金の制度を設けることは義務ではありませんから、当然退職金の制度がない会社もあります

会社により異なるようですが、正社員だけを退職金の支給対象としていて、パートや嘱託等の非正規雇用の社員は対象外としていることが少なくないようです。

退職金の金額は、勤続年数や在職中の給与の金額、退職した理由、会社の規模、同じ業界の他社の水準等により決まることが一般的であるようですが、金額を算定する独自のポイント制等を定めている会社もあるそうです。一般に、大企業の方が中小企業よりは退職金は多く支給されるようです。

そもそも退職金の始まりは、江戸時代の「のれん分け」であると言われています。奉公人が雇い主のもとで長年働いて独立する際に、屋号を使うことを許し、独立資金を与えたのがのれん分けです。

 

受け取り方や原資は会社によって違う

退職金を一括して現金で受け取るのではなく、企業年金として一定期間または終身で一定額ずつ受け取る方法を選択できる会社もあるそうです(企業年金といいます)。

分割で受け取る方が一括で受け取るよりも総額が多いこともあるようで、一括で受け取った現金を自分で定期預金に預けるよりも利回りが高いことも多いようです。それは、受け取りが終了するまで会社が年金の原資を運用しているからであるとされています。

大企業では、社内で退職金の原資を用意していることが多いようです。一方、中小企業の場合は、外部の機関の退職金共済制度等を利用して退職金を支払うことが一般的であるようです。

中小企業では、独自に退職金原資の管理や運用を行うことが困難である場合が多いため、月々の社員ごとの掛金を外部機関に積立てておくことで、万一の会社の倒産や経営状況の悪化があっても、積立てた掛金から退職金が支払われる方法が取られているとのことです。

一部の業界(例えば、建設、林業、福祉等)だけを対象とする共済制度もあるそうです。

 

退職金は給与の後払い?

ところで、退職金とは長年にわたって勤務した人の労をねぎらい支給するもののように思われがちですが、実際には、現役時代に支給されるべき給料から差し引いて積立てておいたものを渡している「給料の後払い」であるとも考えられるそうです。

その根拠は、会社の会計上では退職金や企業年金が「退職給付債務」とされていることです。多額の退職金給付債務は、会社の財務状況を圧迫するとも言われています。

退職金として支払う分を会社が積み立てる場合でも、社員の給与明細にいくら差し引いたかを記載する義務もなく、表には出てこないお金です。

会社が社員の雇用を確保し、必要な人材を繋ぎ止めておくための手段のひとつが退職金ではないかという見方もありますが、実際、昭和30年代の高度成長期では人材不足だったため、人材の定着のために退職金も一役かっていたようです。

退職金制度の有無だけを基準に就職先を選ぶ人はいないかもしれませんが、やはり制度がある会社の方に魅力を感じるかもしれません。

 

退職金前払い制度とは?

社員への債務を負うことを避けるため、従来の退職金制度を廃止して、給料から差し引いていた積立分を先に支給する「退職金前払い制度」をとり入れる会社も出てきました。

退職金の前払い制度では、給料に上乗せで支給される場合は月々受け取ることになります。

社員は先にもらえる方が得であると感じるかもしれませんが、退職金ではなく給与として支給されると所得税が課税され、社会保険料もかかってしまいます。

給与としてではなく、確定拠出年金の掛け金として受け取ることが選択できる会社もあり、この場合は所得税等はかかりません。その代わり、掛金を自分自身で投資商品で運用する必要がありますから、運用次第で手取り額が増減する可能性や、60歳までは引き出せないことに注意する必要があります。

一方、退職金として一時金で支給されるとほとんど課税されないことが多いので、手取り額は多くなるようです。

前払い制度により先に受け取れば、退職前に使ってしまうこともありますから、退職して収入が亡くなった時の備えとして自分で管理しておく必要があり、間違っても、余裕資金であると勘違いして投資につぎ込んでリスクを背負いこむことがないようにしなくてはいけないと言えます。

ひと昔前のように、ひとつの会社で定年まで勤めることが当たり前ではなくなり、転職によりキャリアアップするような働き方が一般的になりつつあるので、勤続年数により退職金が支給されることが現状には合わなくなってきているとも考えられます。

仮に長年勤務したとしても、退職する頃に会社がどのような状況になっているかわからないので、先に受け取る方が安心であると考える若者も増えつつあるようです。

 

退職所得控除には上限が上限がない

税制の改正で検討課題になっているのが、給与所得控除です。

給与所得者がもらった給与全額に所得税がかかるのではなく、扶養する家族があれば扶養控除、社会保険料を支払っていれば社会保険料控除等、何種類かの控除をしたあとの金額に所得税がかかるしくみになっていますが、そのような給与所得控除が縮小されると、税金がかかる対象となる金額は大きくなってしまいます。

実は、給与所得控除には上限がありますが、退職所得控除には上限がありません。退職金を給料の後払いであると考えるのなら、当然ながら退職所得控除にも上限を設けて、課税する上での公平さを保つ必要があるのではないでしょうか。

それが進まない理由は、公務員、とりわけ上級職として官公庁に勤務する人達の多額の退職金を守ることではないかという見方もあるようです。民間企業の退職金が徐々に減額される傾向があるのに、公務員の退職金の減額の程度はごくわずかなものだそうです。

退職金とは、実は先に受け取れる給料だったのか、後払いの方が税金面で有利と考えるだけでよいのか、確定拠出年金として自分で運用できる自由度がある方がいいのか等、様々な問題や考え方があるようです。

いずれにしても、社員が自分では選択できない部分も多く、会社により制度がかなり異なるようですから、自分自身の会社に退職金制度がある場合は改めて詳細を確認し、将来の生活設計を立てておくことが大切ではないでしょうか。

 
 

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